仲間外れにされたと感じたとき、人は大きな不安と戸惑いを抱える。
急に会話に入れなくなったり、誘いが減ったりすると、自分に原因があるのではないかと考えてしまう。
しかし、まず知っておきたいのは、人間の脳は「仲間からの拒絶」を実際の痛みと同じように処理するという点である。
これは心が弱いからでも、気にしすぎでもなく、脳のごく自然な反応である。

こうした状況に直面したとき、最初にやるべきことは、自分を責めるのをやめ、感情に飲まれすぎないことだ。
深呼吸をし、考えをノートに書き出すなどして、心を少し落ち着ける時間を持つのがよい。
たとえば、ある高校生は、グループの友人たちから距離を置かれたと感じたとき、その理由を直接聞く勇気は出なかったが、「自分がどう感じているか」を日記に書き続けたことで、徐々に不安が整理され、落ち着きを取り戻したという。

次に必要なのは、相手の立場を冷静に想像することである。
人間関係におけるすれ違いは、必ずしも悪意から生まれるとは限らない。
相手が忙しかったり、別の問題で余裕がなかったりすることもある。
距離を取られた=嫌われた、とは限らないのだ。
たとえば、ある主婦は、ママ友グループからの連絡が減ったことで不安を感じたが、実は他のメンバーの一人が家庭の事情で活動から離れており、連絡自体が減っていただけだったことが後にわかった。
自分の不安は誤解によるもので、相手に悪意はなかったのである。

そして、最も重要なのは、自分の中に「新しい軸」をつくることである。
仲間外れにされたと感じるとき、多くの人は、元の場所に戻ろうと必死になりすぎてしまう。
しかし、その努力が空回りし、かえって自分をすり減らしてしまうこともある。
そういうときこそ、「ほかに自分を活かせる場所はないか」「本当に大切にしたい価値観は何か」と問い直す機会にしてみるべきである。

たとえば、職場で疎外感を覚えた女性が、以前から興味のあったイラストの練習を始め、毎日一枚ずつSNSに投稿するようになった。
最初は見てもらえることを期待していなかったが、共感してくれる人が少しずつ増え、同じ趣味の仲間ともつながるようになった。
やがて、自分にとって仕事とは別の「認められる場所」「つながる場所」ができ、気持ちに余裕が戻ったという。
また、大学のサークルで孤立を感じていた男子学生が、地元の清掃ボランティアに参加したことをきっかけに、年齢や職業の異なる人々と交流を持つようになった。
最初は戸惑いもあったが、自分の話を新鮮に聞いてくれる人々の存在が嬉しく、自信を取り戻すきっかけになった。
違う世界に触れることで、自分の価値が環境によって変わるのだと実感したという。

新しい軸とは、必ずしも壮大な目標や夢である必要はない。
毎日散歩をする、日記をつける、新しい本を読むなど、小さな行動でもよい。
たとえば、職場での人間関係に疲れていた男性が、「毎日5,000歩歩く」という小さな目標から始め、それを習慣化し、後に歩きながらオーディオブックを聞くようになった。
気づけば、自分なりのリズムができ、自信も少しずつ戻ってきたという。
自分で決め、自分で続けられることが、やがて「自分らしさ」につながる軸になる。

さらに、もし自分の経験が誰かの役に立つと感じられたとき、その軸はより強く心を支えてくれるようになる。
ある女性は、家族の介護に追われ孤独を感じていたが、その体験をブログで発信し始めたことで、同じような状況の人たちから共感や感謝の声が届くようになった。
自分が悩んだこと、苦しかったことが、他人を支える力にもなると知ったことで、自信と誇りを取り戻すことができた。

孤立を感じたときは、自分がダメだからと考えがちだが、実はその瞬間こそ、自分の内側と向き合う大きなチャンスである。
他者の評価や所属だけに頼らない「自分だけの土台」を築くことができれば、人間関係の風向きが変わっても、自分を見失わずにいられる。
孤独は怖いものではない。
使い方によっては、自分を磨くための時間にもなりうるのだ。

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