子供のやる気を引き出すためには、声かけの仕方が極めて重要である。
心理学や脳科学の研究からも、ちょっとした言葉の選び方が、子供の意欲や自己肯定感に大きな影響を与えることが分かっている。
まず、子供を褒める際には、結果ではなく過程に注目することが効果的である。
「100点を取ってすごいね」といった結果のみを評価する声かけは、一見ポジティブに見えるが、子供が「できたときだけ価値がある」と認識し、失敗を恐れて挑戦を避ける傾向を生みやすい。
それに対して、「毎日コツコツ勉強していたから結果が出たね」といったように、努力や工夫といった過程を認める声かけは、子供に「努力すれば成長できる」という感覚を与える。
この考え方は、心理学者キャロル・ドゥエックの提唱する「成長マインドセット」と呼ばれ、長期的なやる気や自己成長につながるとされている。

さらに、言葉の内容だけでなく、声のトーンやタイミングも重要である。
子供の脳は感情に敏感であり、高圧的な口調や苛立った声はストレスホルモンであるコルチゾールを増加させ、やる気を下げる原因になる。
反対に、穏やかで肯定的なトーンの声かけは、安心感とやる気を育む。
特に、子供が頑張っている最中や、何かをやり遂げた直後に「今、集中してたね」「最後までやりきったね」と声をかけると、子供は自分の努力が認められたと感じやすくなる。
子供を認める際には、「あなたは頑張り屋さんね」といった人格へのラベリングは避けるのが望ましい。
たとえ良い意味であっても、子供は「頑張らないと価値がない」と無意識に思い込む可能性がある。
それよりも、「今日の宿題、最後まで集中してたね」といったように、具体的な行動に注目することが望ましい。
これにより、子供はその時々の行動が評価されていることを理解し、自分の行動に対して主体性を持ちやすくなる。
また、意外に思われるかもしれないが、「ありがとう」という言葉も子供のやる気を高める。
親が子供に対して感謝の気持ちを伝えることで、子供は「自分は役に立てている」と実感し、自己肯定感が高まる。
たとえば、「お皿を片付けてくれてありがとう」「静かにしてくれて助かったよ」など、日常の小さな行動に対して感謝を示すだけで、子供は自分の存在や行動が肯定されていると感じ、自然とやる気を持ちやすくなる。

一方で、逆効果になる声かけもある。
「ちゃんとしなさい」「早くして」「どうしてできないの」といった言葉は、子供にとって抽象的かつ否定的に響きやすく、自己効力感を損なう原因となる。
また、「お兄ちゃんはできたのに」「もっと頑張れるはずでしょ」といった比較やプレッシャーも、子供のやる気を削ぐ要因となるため注意が必要である。

子供のやる気を育てる声かけには、単なる褒め言葉以上の意味がある。
言葉の選び方、声の出し方、タイミング、そして何を認めるか。
それらすべてが積み重なって、子供の中に「もっとやってみよう」という意欲が生まれる。
日々のちょっとした一言が、子供の未来を大きく左右する力を持っているのである。
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