才能とは、生まれつきの特別な能力のように思われがちだが、実際はもっと身近で、誰もが持っている可能性のあるものだ。
心理学や脳科学の研究によれば、才能とは「得意なこと」「情熱を持てること」「環境からの影響」の3つが重なったところに生まれるとされている。
つまり、単に生まれつきの資質だけでなく、興味の持ち方や育った環境、周囲からの評価も大きく関わってくる。
しかし、多くの人が自分に才能がないと感じてしまうのは、いくつかの心理的な仕組みが関係している。
まず、自分が苦労せずにできることを軽く見てしまう傾向がある。
たとえば、初対面の人の顔をすぐ覚えられる人が、それを当たり前と思ってしまうように、本人にとって自然な行動ほど「才能」だとは気づきにくい。
また、学校や社会では一部の能力しか評価されないことが多く、それ以外の分野での得意さや感受性が見過ごされてしまうこともある。
さらに、他人と比較することによって、自分の強みがかすんで見えるという問題もある。
SNSや成績表のような明確な基準がある場では、自分より優れている人が常に目に入るため、自分の可能性を過小評価しやすくなる。
才能は「すぐにできること」よりも、「自然と続けてしまうこと」や「興味が尽きないこと」の中に隠れている。
なぜかやめられない、つい考えてしまう、時間を忘れて取り組んでしまう、そういった行動こそがヒントになる。
たとえば、人の話を深く聞くのが好きな人は、共感力や洞察力があるかもしれない。
何かの仕組みや構造にすぐ目がいく人は、分析や改善の才能があるかもしれない。
こうした傾向は、本人にとってはごく自然なことであるがゆえに、見落とされやすい。
また、幼いころに何に夢中になっていたかを思い出すのも有効である。
発達心理学では、才能の原型は8歳前後に現れることが多いとされている。
たとえば、図鑑を読むのが好きだった、空想の世界で遊ぶのが得意だった、物を分解するのが好きだったといった記憶は、将来の興味や能力につながっている可能性がある。
結局のところ、才能とは外に探しに行くものではなく、自分の中にすでにあるものに気づいていく作業である。
やっていて楽しい、苦にならない、周りから感謝される、そのような行動の中にこそ、自分にしかない資質が表れている。
才能とは努力のいらない魔法ではなく、違和感なく続けられる方向性のことであり、それを見つけるには、自分の無意識な行動に注意深く目を向けることが大切である。
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