作り笑いでも気分が良くなることが知られている。
これは「表情フィードバック仮説」と呼ばれ、顔の筋肉の動きが脳に影響を与え、感情を変化させる仕組みである。
この仮説を支持する代表的な研究に、ストラックら(1988年)の実験がある。
参加者にペンを口にくわえさせて笑顔に近い表情を作らせたところ、その状態で漫画を読んだ参加者は、そうでない参加者より漫画を面白いと感じた。
この結果から、表情を作ること自体が感情に影響を及ぼす可能性が示唆された。

この表情フィードバックの効果について、コールズら(2019年)は、過去50年間に行われた138の関連研究を分析した。
その結果、作り笑いによって気分がわずかに向上することが統計的に確認された。
ただし、効果は個人差が大きく、日常的に笑顔を多く使う人とそうでない人では感じ方に違いが出る可能性がある。

また、笑顔の効果には心理的要因も関係している。
例えば、笑顔を作ることで気分が良くなると信じている人ほど、その影響を受けやすいという研究もある。
一方で、不自然な笑顔を作ることに違和感を覚える人の場合、逆に気分が悪くなることもある。
つまり、誰にでも同じ効果が得られるわけではなく、笑顔の受け止め方や状況によって変化する。

こうした研究から、意識的に笑顔を作ることは、気分を向上させる一つの手段になり得ると考えられる。
ただし、その効果は一律ではなく、個人の感じ方や状況によって異なる。
日常生活で試してみて、無理なく取り入れられる範囲で活用するのがよいだろう。
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