「自分はつまらない人間かもしれない」という不安は、多くの場合、他者との比較から生まれる。
SNSや職場、友人関係の中で、周囲の人々が充実しているように見えるとき、自分だけが何も持っていないような感覚に陥る。
その感覚はやがて、「自分には何も特別なものがない」「人として魅力に欠けている」という自己否定に結びつきやすい。
しかし、そもそも人間の魅力や面白さとは、他者と比較することで測れるものではない。
誰かの物語を自分に当てはめた結果、「ズレ」をつまらなさとして認識しているに過ぎない。
心理学者チクセントミハイによると、人間が最も生き生きとするのは、他者の評価を得たときではなく、何かに没頭しているときであるという。
つまり、人から面白く見える人の多くは、自らの好奇心や関心に従って夢中になっているだけであり、「面白くなろう」と努力しているわけではない。
自分の人生を面白くしたいと願うなら、他人の基準ではなく、自分が夢中になれるものに向き合うことが出発点となる。
とはいえ、「夢中になれるもの」がすぐに見つかるとは限らない。
だからこそ、小さな問いを積み重ねることが重要である。
自分がどんな瞬間に楽しいと感じたか、子供の頃に何を面白いと思っていたか、誰かに言われて嬉しかった言葉は何だったか。
そうした記憶をたどることで、他人の価値観から自分を解放し、自分だけの“面白さの定義”を見つけることができる。
また、「つまらない」と感じている状態には、別の側面もある。
それは、変化の前兆である可能性だ。
人は、何も挑戦していないとき、あるいは挑戦したいのに動けないときに、自分自身を退屈に感じやすい。
つまり、「自分はつまらない」と思っている状態は、何かを始めるべきタイミングであるというサインでもある。
この時に有効なのが、「まだやっていないだけのこと」に目を向ける姿勢である。
特別なことでなくてよい。
未体験の場所に行く、昔気になっていた本を手に取る、少し変わった趣味に触れてみる。
どんなに些細なことでも、自分の“外”にある新しい体験に一歩踏み出すことで、人生に風が通るようになる。
結果を求めず、ただ自分の感覚に従って動く。
それがやがて、没頭へとつながっていく。
「面白い人間にならなければならない」という思い込みは、人を他者の期待に縛り、自分の可能性を狭めてしまう。
だが、人生の面白さとは、外から見た派手さではなく、自分がどう生きるかという誠実さの中にある。
今の自分が興味を持てること、少しだけ心が動くことに素直になり、無理なく続けていく。
それこそが、自分だけの人生を面白くするための本質的な行動である。
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