好きなのに、素直になれない。

言いたいのに、言えない。

「会いたい」も「寂しい」も、心の奥で膨らんでは、飲み込まれていく。
そんな恋を、誰もが一度はしたことがあるのではないだろうか。

でも、どうして私たちは、好きな人にほど素直になれないのだろう。

それはきっと、心のどこかで知っているからだ。

本当の気持ちを伝えることは、自分を丸ごと差し出すことに近い。

だから、もしそれを拒まれたら、きっと立ち直れない。
そんな恐れが、言葉をせき止めてしまうのだ。

素直になれない人は、自分を守るのが上手い。

駆け引きなんてしているつもりはなくて、ただ静かに、自分を傷つけない道を選んでいるだけだ。

でもその選択は、相手から見ると「何を考えてるか分からない人」になってしまう。

本当は好きなのに、まるで無関心なふりをしてしまう。
その結果、好意は伝わらず、相手の気持ちも離れていく。
そして恋が終わったあと、後悔だけが残る。
「もっとちゃんと伝えればよかった」

「好きって、言えたかもしれないのに」

けれど時間は戻らないし、その後悔を誰かに見せることもできない。
だからまた、次の恋でも気持ちを隠してしまう。

こうして人は、素直になれないまま、同じ道を何度も歩く。

気持ちを抑えるクセは、心だけでなく脳にも影響を与える。

本音を閉じ込めるたびに、心は少しずつ緊張し、脳はストレスを感じる。

長く続けていると、自分が今、何を感じているのかさえ、分からなくなってくる。

感情がにぶくなり、恋愛そのものが「疲れるもの」になってしまう。
それはとても静かな孤独だ。
誰にも責められない代わりに、誰にも愛されない。

でも、これだけは忘れないでほしい。

素直であることは、なにも勇気を振り絞って告白することじゃない。

ほんの少し、自分の心に正直になってみることからでいい。

「今日は、ちょっと会えてうれしかった」

「その話、もっと聞きたいな」

そんなささやかな言葉が、自分を変える第一歩になる。

大きな愛情を伝えるには、小さな素直を重ねていくしかない。

いきなり全部をさらけ出す必要はない。
でも、少しだけ心の窓を開けてみると、そこからちゃんと光は入ってくる。
そしてその光が、やがて誰かとのつながりになっていく。
恋愛で素直になれない人の末路は、誰かに捨てられることではない。
本当の怖さは、自分の感情にすら気づけなくなって、
誰とも心を通わせられないまま、時だけが過ぎていくことだ。
だから、たった一言でもいい。
誰かに届くように、まずは自分の気持ちを、口にしてみてほしい。
それが、恋を終わらせないための、たったひとつの方法なのだから。
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