将来の夢がないことは、必ずしも悪いことではない。
むしろそれは、自分の未来に余白がある状態とも言える。
かつては「将来の夢」を持つことが理想とされ、学校でも夢を作文に書かせたり、面談で話題にされたりすることが多かった。
しかし現代のように変化の激しい時代においては、ひとつの夢や目標にこだわりすぎることで、かえって可能性を狭めてしまうことがある。

将来の夢が明確な人は、その目標に向かって努力するエネルギーを持っている。
一方で、それが叶わなかった場合の喪失感は大きく、そこから立ち直るのに時間がかかることもある。
また、夢に執着するあまり、変化への適応力が低下したり、他の選択肢を見逃したりする可能性もある。

それに対して、夢がない人は「まだ何者にもなっていない」状態にあり、柔軟に選択肢を広げながら進むことができる。
心理学的には、このような状態は「オープンモード」とも言われ、好奇心や創造性が高まりやすいとされている。
また、他者の価値観にも寛容になりやすく、多様な環境や人間関係の中でうまく適応していける傾向がある。
今の時代は、ひとつの仕事や生き方に縛られることなく、自由に方向を変えながら生きていく人が増えている。
副業や転職、フリーランス、複業といった柔軟な働き方が広がる中で、明確な夢を持たない人の方が、むしろ時代に合った「探索型」の生き方を自然に実践しているとも言える。

さらに、いくつかの研究では、夢の有無と幸福度との間には明確な差が見られないという結果も報告されている。
大切なのは遠くの目標ではなく、日々の小さな満足感を積み重ねることである。
夢があってもなくても、その人が自分らしく生きていれば、それが幸せに繋がるという考え方が支持されつつある。
将来の夢がないというのは、決して欠点ではない。
それはまだ白紙の未来を持っているということであり、その余白に何を描くかは、これからいくらでも決めることができる。
だからこそ、夢がない今この瞬間も、大きな可能性に満ちているのである。
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