試験前になると、急に部屋を掃除したくなることがある。
これは単なる現実逃避のように思われがちだが、実は脳や心の働きに基づいた自然な反応である。
試験勉強のようにストレスがかかる状況では、脳は限られたリソースを集中に使おうとする。
しかし散らかった環境は視覚的なノイズを生み、無意識のうちに注意力を奪う。
こうした状況を避けるため、脳は「まず空間を整えよ」と信号を送っている可能性がある。

また、掃除は自分の手で結果をすぐに得られる行動であり、コントロール感を取り戻す手段としても機能する。
試験勉強は成果がすぐには見えず、終わりも見えにくい。
一方で掃除は短時間で部屋がきれいになるという視覚的な変化があり、自分が状況をコントロールできているという安心感を与える。
掃除が一種のセルフセラピーになるのは、このような理由による。

とはいえ、掃除をきっかけに模様替えにまで発展したり、アルバムを開いて思い出に浸ったりするのは、勉強からの逃避行動である可能性が高い。
こうした行動を防ぐには、掃除をあらかじめ「集中のための準備」として限定的に行うことが重要である。
たとえば時間をタイマーで15分から30分に設定し、その間だけ机周りや視界に入る範囲を片付ける。
これにより、環境は整い、過剰な時間の浪費を防げる。

掃除の最中に、勉強のタスクや教材を整理するのも効果的である。
散らばったプリントやノートを整える過程で、まだ手をつけていない範囲に気づいたり、優先順位を再確認できたりする。
さらに掃除中に集中できるBGMを流しておけば、掃除が終わった後も自然とそのまま机に向かう流れをつくることができる。

掃除を終えた直後には、すぐに簡単な勉強タスクに取りかかるとよい。
「掃除の後に過去問を1問だけ解く」など、あらかじめ決めておくことで、行動が中断せず、スムーズに勉強モードに移行できる。

掃除したくなる衝動は、正しく使えば集中力を高める起爆剤になる。
ただし、それを無制限に許せば、勉強からの巧妙な逃避にもなりうる。
大切なのは、自分の心理を理解し、その衝動を目的に応じて使い分けることである。

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