なぜ、あの人は出世するのか。
決して誰よりも優秀というわけではない。
声が大きいわけでも、ゴマをすっているようにも見えない。
むしろ、ごく普通の態度で、静かに、自然に、気づけば上のポジションに立っている。
そういう人が、職場には一人や二人、必ずいる。
出世する人には、共通する「空気」がある。
それは能力や学歴といった分かりやすい指標ではなく、生き方や考え方に深く根ざしたものだ。
たとえば、自分はやればできる、困難な状況も乗り越えられると、本気で信じている人がいる。
この「自己効力感」と呼ばれる感覚は、努力の先に結果があると信じる力でもある。
周囲が尻込みするような問題でも、「何とかできるはずだ」と前向きに捉え、行動を止めない。
そんな姿勢は、気づかぬうちに信頼を集めていく。
出世する人は、人との関係を軽んじない。
誰かの気持ちに気づき、必要なときにさりげなく手を貸す。
強く押し通すことより、相手を尊重しながら話を進めることの方が、長く続く関係を生むと知っている。
仕事は結局、人と人との間で起きるものだから、人望や信頼は地味でも確かな力になる。
もうひとつ、彼らは短期的な成果に一喜一憂しない。
出世する人ほど、焦らず、驕らず、自分の行動を「どう見られるか」より「どんな意味があるか」で考えている。
そのため、自分の評価を気にするよりも、全体の流れや組織の方針に目を向ける。
そうして長い目で考え、周囲を巻き込みながら動ける人は、いずれその姿勢が評価されるようになる。
出世する人は変化を恐れない。
むしろ、変化の中にチャンスを見つけるのが上手い。
前例がない、新しい、分からない。
そんなときに動ける人は多くないが、彼らは「どうせ変わるなら、自分が先にやってみよう」と考える。
必要なら勉強もするし、やり方を変えることもいとわない。
新しい価値に対して開かれている人は、自然と先頭に立つ場面が増えていく。
そして何より、自分自身を客観的に見ている。
自分の言葉がどう響くか、どこで感情的になってしまうか、自分の弱さも含めて冷静に見つめられる人は、周囲に安心感を与える。
感情を押し殺すのではなく、必要なときに必要な温度で言葉を選べる。
こうした「一歩引いた視点」が、リーダーとしての深みにつながっていく。
出世とは、偶然のように見えて、実はとても地道な積み重ねの結果である。
派手な成果や口の上手さではなく、日々の姿勢、人への接し方、自分への向き合い方。
そのすべてが少しずつ積み重なり、気づけば周囲が「あの人に任せたい」と思うようになる。
出世とは、選ばれるのではない。
信頼の連続の中で、いつの間にか“上がっていく”ものなのだ。
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