グループワークが苦手と感じる人は少なくない。
その理由はさまざまだが、大きく分けて三つの心理的な傾向が関係している。
一つは、自分の発言に対する他人の評価を気にしすぎる傾向である。
たとえば「こんなこと言って変に思われないか」「間違ったらどうしよう」と不安になり、発言そのものがハードルになってしまう。
これは心理学で「評価懸念」と呼ばれ、特に真面目で慎重な人に多く見られる。
こうした不安をやわらげるには、「意見は正解でなくても価値がある」と考えることが役に立つ。
実際、学校でも職場でも、意見を出すこと自体がチームに貢献している場合が多い。
たとえば、「自信はないんですが、こういう考え方もあるかもしれません」と前置きして発言するだけで、気持ちが少し楽になり、相手にも柔らかく伝わる。

二つ目は、自分の役割が不明確な状態である。
何をすればいいのか分からず、結局会話についていけないまま終わってしまうことがある。
こうした場合は、最初に「自分は何をするか」を決めてしまうのが効果的だ。
たとえば、「今日の話を簡単にメモしながら進めますね」と自分から申し出るだけで、場への参加感が高まり、緊張も和らぐ。
また、「全体の意見をまとめるのが得意なので、最後に要点を整理します」といったように、自分の得意な作業を役割にすれば、安心して貢献できる。

三つ目は、対人関係そのものに疲れやすい、いわゆる内向的な気質に由来するものだ。
大勢の人と同時に関わることがストレスになり、エネルギーを消耗してしまう人も多い。
こうしたタイプの人には、事前に少人数で意見を話す機会を持ったり、オンラインで意見を共有しておいたりする方法が有効である。
たとえば、グループワークの前に1対1で「今日は何を話すか」を軽く共有しておくと、本番で話す内容に迷わず、気持ちにも余裕が生まれる。

加えて、事前準備は非常に効果が大きい。
グループワークの前に、簡単なメモを用意しておくだけで、発言のしやすさが格段に変わる。
たとえば、箇条書きで「言いたいことを3つだけ書く」だけでも、頭が整理されて不安が減る。
また、他の人の意見に反応する練習として、「そうですね、私も似たように思っていて……」や「それを聞いて思ったのですが……」といった言い回しをいくつか用意しておくと、発言の流れに乗りやすくなる。

会話中の沈黙も、多くの人が不安を感じる場面である。
だが、沈黙は必ずしも悪いものではない。
実際には、考えをまとめる大切な時間であり、無理に埋めようとすると内容が浅くなってしまうことがある。
そんなときは、「少し考えますね」や「一度整理してからお話しします」と言葉で沈黙を説明するだけで、その場の空気はぐっと落ち着く。

グループワークにおいて最も重要なのは、完璧にふるまうことではなく、「自分なりに関わる」ことである。
たとえ意見が間違っていても、それがきっかけで話が深まることはよくある。
誰もが最初からスムーズに話せるわけではないが、自分の考えや立場を少しずつ表現していくことが、苦手意識の克服に繋がる。
完璧な貢献ではなく、誠実な姿勢が評価される場面は多い。

まずは、小さな一歩からでよい。
役割を一つ引き受ける。
話す前にメモを作る。
一人と事前に話しておく。
そうした工夫の積み重ねが、グループワークを「苦手なもの」から「ちょっと得意なもの」に変えていく土台になる。
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