人は初対面の相手を、ほんの数秒で判断する。
しかもその判断は、驚くほど簡単な情報に左右されている。
たとえば、声。
何を話すかよりも、「どんな声で話すか」が大切だというと、少し意外に思うかもしれない。
でも実際、心理学の研究では、言葉の内容が印象に与える影響はほんのわずか。
むしろ、声のトーンや話し方のほうが、何倍も相手の記憶に残る。
静かすぎる声、早口で落ち着かない話し方、語尾が曖昧なしゃべり方。
そういった細かい要素が、「この人、なんだか信用できないな」という印象につながってしまうのだ。
なぜ声がそれほど大きな影響を持つのかというと、私たちの脳がそうできているからだ。
人間の脳は、初対面の人を目の前にすると、無意識に「この人は安心できる相手かどうか」を判断しようとする。
そのとき頼りにしているのが、声の調子やテンポ、口調の柔らかさといった、言葉の“雰囲気”の部分。
だから、たとえ笑顔で「よろしくお願いします」と言っていても、声がか細かったり、早口だったりすると、「あれ、この人ちょっと不安そうだな」と受け取られてしまう。
実はこの“声の印象”は、話し始めてからわずか3秒で決まるとも言われている。
たった一言、二言。
それだけで、相手はあなたに対する印象をほぼ固めてしまう。
逆に言えば、たった数秒で信頼感や親しみやすさを与えることだってできるのだ。
コツは、特別な技術ではない。
少し声を明るくしてみる。
語尾まできちんと話す。
話すスピードをゆっくり目に整える。
それだけで印象は驚くほど変わる。
もちろん、これは一朝一夕で身につくものではない。
でも、簡単な練習で誰でも少しずつ改善できる。
たとえば、口をしっかり開けて「あえいうえおあお」と発音する練習。
滑舌が良くなるだけでなく、自然と声がはっきり通るようになる。
また、実際に自分の声を録音して聞いてみるのもおすすめだ。
自分では気づかないクセや、改善点がすぐに見えてくる。
最初は少し恥ずかしいが、効果は抜群だ。
さらに、場面ごとに声の印象を使い分けることもできる。
面接やプレゼンでは、ゆっくり、落ち着いた声で話すと信頼感が出る。
初対面の人との会話では、少し高めのトーンで話すと親しみやすくなる。
電話なら、表情は見えなくても、声に笑顔がにじむ。
それだけで印象は柔らかく、明るくなる。
声は見えない。
でも、人の心に強く残る。
だからこそ、「声の身だしなみ」は、誰にとっても大切だ。
見た目を整えるように、話し方や声の調子にも少し意識を向けてみる。
そうすることで、相手の反応が少しずつ変わってくるのを実感できるはずだ。
第一印象を変えるというのは、自分の見え方を少し変えること。
それは、思っているよりもずっと簡単で、そして効果的な方法かもしれない。
コメント