心理学者ロイ・バウマイスターらの研究によれば、自尊心が高くてもそれが安定していない人は、他者からの批判や軽視に非常に敏感であり、攻撃的な態度をとる傾向があるとされている。
これは、一見すると自信満々に見える態度の裏に、実は「見下されまい」とする不安や防衛反応が隠れていることを示唆している。
特に、接客業の店員のように社会的に自分より立場が下と認識しやすい相手に対しては、その不安が表出しやすい。
自分が優位に立てると感じた瞬間、人は無意識のうちに自尊心を守ろうとして相手を押さえつけるような態度をとる。
これは「権威勾配」と呼ばれる現象とも関係しており、立場の違いが明確な場面では、支配的な行動が出やすくなる。
さらに興味深いのは、こうした高圧的な行動をとる際に、本人の生理的反応としてストレスホルモンであるコルチゾールの分泌が増加することが確認されている点である。
つまり、外見上は余裕があるように見えても、内心では強い緊張や不安を感じていることがある。
威圧的な態度は自信の表れではなく、不安定な自我を守るための苦しい選択肢なのかもしれない。
皮肉なことに、こうした行動を繰り返す人は、周囲との人間関係に悪影響を及ぼしやすく、結果的に社会的な孤立を深めるリスクがある。
他人への威圧は一時的に自分を守るかもしれないが、長期的には自身の居場所を狭めていくことにつながるのである。
コメント